またまた今野敏です。


「廉恥」というタイトルはなかなか面白いです。

女性の他殺体が発見された。
被害者がストーカー被害の相談をしていたことから
事件は早期解決すると思われた。
ストーカー被害の相談をしていたにもかかわらず事件が起きたとなれば
マスコミの格好の餌食だ。
警察にはできることとできないことがある。
それを説明した上で相談者がどうするかまでは指示できない。
あくまで「相談した」という事実ができればいい・・・?
マスコミに事件が漏れることへの焦りから
事件の解決は思わぬ方向へ二転三転し、誤認逮捕寸前までいってしまう。
本当にこれはストーカー殺人なのか。
被害者はストーカーの被害を訴えていた。
しかし、それは一度ではなかった。
ストーカーは二人いた?


「被害者」だった被害者。本当の被害者は誰なのか、というあらすじです。


これは面白かった。
テンポもいいし、少し疑問に思うという心理がすごく繊細に描かれていて
わざとらしく「そうだろうか?」などと書いてないところがいい。
こういうところで「〇〇はふと疑問に思った」とか書いてあると
いやいや説明しすぎ。読者バカにしすぎ。
とか思うのですが。
まったく自分と似てないと思う登場人物にも
どこか同じ部分が見つかる、すごくうまい描き方がされているのが印象に残りました。
人間関係、家庭問題、なども織り交ぜていますが
事件そのものがおもしろいので、くどくなっていません。


この直前に読んだのが
1998年に出版された「イコン」でしたが
やはり20年の間にどんどん洗練されたんだなという偉そうな感想を持ちました。
余計なものがどんどんそぎ落とされて面白い筋だけが浮き出た感じ。
やっぱり今野敏は面白い。