独自独尊読書日記

「あらすじ」は読んで自分が、こうだろうと思ったものを書いています。 他のサイトからの引用はなるべくしないようにしています。 主観を大切にした、独自、独尊のブログにしたいと思います。

2017年10月





今野敏の警察もの、暴力犯係。

おもしろかった~~
エンタメ小説。



主人公となるのは暴力団を相手にしている警察官、係長の諸橋。
そしてバディは係長補佐の城島。
係長と係長補佐になった理由もすこし触れられているが
この二人の関係がすごくよい。
諸橋は城島のことを信頼していて、一応係長補佐という自分の部下にはなるのだが
城島の出した意見には必ず従っている。
そして飄々として人当たりのいい城島は
突っ走り気味で敵を作りやすい諸橋のフォローに回っている。
このコンビとその部下たちがみんな個性があってストーリーにもうまく絡んでくる。

暴力団とのかかわりの中でも
ちょっと異色なのが神野という見た目好々爺の組長。
暴力団ということで諸橋にとっては「敵」なのだが
どうも味方してくれているような?不思議な存在。
これはぜひ読んで実感してもらいたい。


シリーズ二作を連続して読んだ。
結構古い作品なのかな?

もちろん警察の事件なんかもしっかり構成されてる。
そこを登場人物たちの魅力で
エンタメ要素を大きくしている。

すっかりみなとみらい署シリーズのファンになってしまった。

逆風の街 横浜みなとみらい署暴力犯係
禁断 横浜みなとみらい署暴対係




の二作を読んだ。
どうやらまだ二作あるらしいので読むのが楽しみ。

「悦ちゃん」獅子 文六

悦ちゃん (ちくま文庫)
獅子 文六
筑摩書房
2015-12-09






痛快!

最近読んだ中でもかなり面白い本だった。

悦ちゃんは10歳の女の子。
銀座大好き。

お母さんがいない悦ちゃんは
パパのお嫁さん候補が気に入らない。
悦ちゃんのママになるからには
悦ちゃんが気に入らなきゃだめじゃないか。

悦ちゃんは自分が気に入ったお姉さんに
パパのお嫁さんになって、と頼むのだが・・・。



ドタバタコメディ。悦ちゃんがかわいい!
「おマセ」な悦ちゃん、時々こどもらしい。
気が強くて、頑固で、思い切りがある。
とにかく悦ちゃんのファンになってしまう本なのだ。


そして何よりこの作品がすっごく古いということに驚いた。

最初はわざとそういう文章を書いてるのかな?と思ったら
古い本だった。
語り口調が独特なのだ。

カタカナが途中途中にまぎれこんでいて
最初に本を開いたときは少し読みにくい?と思ったら
全然読みづらくない。すいすい読める。
すいすい、というより、トントン、という感じかな?
とにかくテンポがいい。

落語を聞いているような感じで読むととっても面白い。
展開もいいし、ストーリーもいいし、
登場人物みんな愛おしい。


こんなにみんながハッピーな本はなかなかない。

元気がない人も元気な人も
心が笑顔になる作品。
ぜひ読んでほしい。




悦ちゃん (ちくま文庫)
獅子 文六
筑摩書房
2015-12-09

「ハードラック」薬丸岳




単行本で刊行されたときに「相沢」だった苗字が「江原」に変わったのかな?


読みやすくてどんどん読み込んでいけるんだけど
最後の最後でちょっとスピードダウン、トーンダウン、ていう感じ。


あらすじは
食べていくこともままならない底辺の若者が
闇サイトで知り合った人たちと企てた犯行でひとりだけ嵌められる。

簡単に言えばそういう話。

ハードラックの意味も途中で重要なキーワードとして書かれる。


犯人についてはトラップも仕掛けられているけれど
たぶん途中で気づく人も多いと思う。

個人的に「懲役7年」が一番のハードラックだった。




昨日読んだ本「闇の底」薬丸 岳
闇の底 (講談社文庫)
薬丸 岳
講談社
2009-09-15




幼い子供が殺される事件が起こるたびに
過去に性犯罪で幼児を殺した殺人者たちが一人ずつ殺されていく。

というあらすじを読んで手に取った本。

薬丸岳は好きな作家のひとりなので、作家買いでもある。


ちょっとミスリードが強すぎるかなぁ。
途中から「こう見せたい」と
ネタバレしすぎなくらいで、嘘くさくて
「あ、これミスリードだろうな」と気づく。
気づいた上で読んでしまうからどんでん返しにならず、今一つで残念。


小児性犯罪を描いた本は出来がいいものが多いのでちょっと残念度が目立ってしまう。
道尾秀介なんかは子供の犯罪を題材にしたものにはずれが少ない(ないとは言わない)
ので、読んだことがない人はぜひ読んでほしい。
個人的に一番傑作だと思うのは「ラットマン」
ラットマン (光文社文庫)
道尾 秀介
光文社
2010-07-08





あと誉田哲也の「主よ、永遠の休息を」
主よ、永遠の休息を (中公文庫)
誉田 哲也
中央公論新社
2016-03-18





薬丸岳は少年犯罪ものが素晴らしいのでおすすめしたいのは
「友罪」

友罪 (集英社文庫)
薬丸 岳
集英社
2015-11-20




最近読んだ「Aではない君と」もよかった。これは
加害者家族視点からの少年犯罪。




加害者側から描くものでノンフィクションの
「加害者家族」という新書があったけどこれはすごく面白かった。ぜひ。






加害者といえば「ストーカー加害者・私から逃げてください」という本が気になっている。
近々読んでみるつもり。


少し前に読んだ本「闇に香る嘘」下村 淳史


闇に香る嘘 (講談社文庫)
下村 敦史
講談社
2016-08-11






全盲の主人公から見た「兄の違和感」がテーマ。
中国残留孤児として離れていた兄が帰国した。
しかし自分は全盲になってしまい、その顔を見ることができない。
中国に長くいたためなのか、中国を強く擁護するような兄に
「兄は中国人で、日本人の兄になりすまして日本にやってきたのではないか」
などといろいろ推測するが、目が見えないためヒントが限られてしまい
真相になかなかたどり着けない。


これは面白かった。江戸川乱歩賞受賞作。
まさに「文章」でしか表現できない作品だと思う。
全盲の主人公と同じく、読者は主人公の視点(あえて)から物語を「想像」するしかない。
周りで起こることも、反応を「感じる」ことも、音を聞いて推測されることも。
これこそ映像ではできない面白さがある。
同じ理由で「本でしか楽しめない作品」というのはいくつもあるのでまた紹介したいと思う。

見事なラスト。
すべてがつながる。
ミステリーだけではないのでミステリーが苦手でも読めると思います。



闇に香る嘘 (講談社文庫)
下村 敦史
講談社
2016-08-11



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